命がけの思いも喉元過ぎれば
動物の毛にアレルギー反応を起こす方は少なくありません。このような方には、ペットは飼わないようにお話ししています。しかし、これからペットを飼おうとしている方ならともかく、既に、ペットを飼われ、家族同然の存在になっている方に対しては、これでも内心はかなり心を痛めてお話しているのです。
最近では、自閉症のお子さんや認知症のお年寄りに動物(ペット)療法が取り入れられているなど、ペットの存在が医学的にも見直されてきています。ペットは人々の心を支える重要な役割を果たしているのです。精神作用という点ではペットの存在は否定できないものの、やはりぜんそくの方にとっては、「毛」はネックになります。
そこで、当院では、どうしてもペットを飼いたいという方には、アレルギーを起こさないような体づくりと、吸入ステロイド薬によるコントロールの大切さをお話しするようにしています。そして、これからどうしてもペットを飼いたいという方には、毛のない動物をおすすめしています。カメやトカゲなどのは虫類や金魚や熱帯魚などということになりますが、この提案も心が痛みます。多くの方が毛のある動物の、その温もりを求めているのでしょうから、仕方ないのですが・・・・・。
仕方ないと言えば、こんな方もいました。ぜんそく発作で三週間も病院に入院していたこの方は、生命の危機を乗り越えて退院し、その後、当院にやってこられました。重症の部類に入る方で、「生命の危機」は決して大袈裟な表現ではありません。
この方から入院の経緯をお聞きすることができたので、ペットの毛がいかにぜんそくに悪いかという話をしたところ、さすがに「もう飼いません」という言葉がもれました。
ところが、その後、その方が来院され、新しいペットを飼っていることがわかりました。「喉元過ぎれば・・・・・」なのでしょうか。発作原因は明らかにペットの毛なのに・・・・・。
死にそうな思いまでしたのに・・・・・。
定期的に通院し、しっかりセルフコントロールしていくことを心がけていただくように祈るばかりです。