ドーピング!名馬ディープインパクトの汚名

 昨秋、フランスの凱旋門賞に出走した名馬、ディープインパクトが薬物ドーピングで失格となったのは記憶に新しいところです。問題になった薬物はイプラトロピウム。ぜんそくの治療薬で、気管支拡張剤に分類されます。

 禁止薬物をなぜ使用したのか、真相は闇の中だともいわれ、禁止薬物の基準が国によって異なるということも問題を複雑にしてしまいました。さまざまな憶測を生んだ一件でしたが、名馬といえども、馬にドーピングがわかるわけはなく、ディープインパクトが気の毒に思えたのは私だけではないのではないでしょうか。

 しかし、これがアスリートとなると、わからなかったではすまされません。ある程度のドーピングの知識を持つことは、国などを代表するものとして当然の義務ともいえるからです。故意に使用するのは問題外ですが、知識がなかったために、メダルを剥奪されることは決してあってはなりません。ご本人にとっても、大きな傷を負うことになってしまいます。

 ところで、禁止薬物にはどんなものがあるのでしょうか。

 ざっと挙げると、筋肉増強剤や興奮剤、麻薬性鎮痛剤、利尿剤などです。陸上のベン・ジョンソンが使用したのは筋肉増強剤の一種で、男性ホルモンから合成した蛋白同化ステロイドというものです。

 ぜんそく治療で使用される気管支拡張剤(β2作動薬)も禁止薬物となっていますから、治療のために使用している場合は、事前に届け出る必要があります。

 ここでもう一度、ディープインパクトの話に戻りましょう。馬はほとんど鼻で呼吸をしているといいます。気管支拡張剤を使用することにより気管支が広がれば、当然呼吸がしやすくなります。呼吸機能が高まるということは、運動能力が高まることということですから、禁止薬物となるのですね。

 馬のことはよくわかりませんから、このくらいにしておきますが、薬というものは使い方によって、いろいろな結果を生み出すものだとつくづく思います。その人の一生を取り返しのつかないものにしてしまう魔力を持っている一方で、その人の生活を快適にする力も持っているのですから・・・・・。